大卒者の就職難に関する池田信夫氏の議論について

池田信夫 blog : 大卒はなぜ職にあぶれるのか
そもそも大学進学率は、高度経済成長期も伸びが大きかった*1わけなんだが、それが問題にならなかったのは、社会がそれだけ大卒者を吸収できていたからであって、当時の大学生の質が高かったからではなかろう。

また現在の進学率が伸びているのは、高卒で就職出来なかった層が無理をして進学という道を選んでいるのも要因としてあって、これもまた、社会がどれだけ高卒者を吸収できているか、という問題がある。

(そもそも、この50%という数字が異常に高いものといえるかどうか。国際的にみればこれは必ずしも高くはない。*2

「国立大学と一流私大以外は学歴をみて採用しなくなった。」

とあるが、そのカテゴリにある人でも苦労している人を私は沢山知っている。例えば私がtwitter上でフォローしているフリーライターの小林拓矢さんなんかは、早大卒で卒業論文でも良い成績を取った*3にも関わらず、就職では不遇な目に逢っている。

また、池田信夫は「AO入試」や「推薦入学」を問題視している。しかし、これらが入試ではない、というのは余りにも乱暴な議論である。池田先生が強弁を執っておられる上武大学ではそうなのかもしれませんが。そもそも入試形態が問題となるのなら、選考の際に「どのように入学したのか」を聞けばよいだけの話であるが、こういうことを求職者の学生に質問しているケースはどれだけあるのだろう。


結論を言えば、採用と学力や知力、知性は関連性が無くなってきているか、あるいはそれらの相対的な重要性が低下している、という議論の方が適当である。

よって、池田先生のような議論よりも、大学と職業の接続やハイパー・メリトクラシーの問題を重視する本田由紀あたりの議論の方が、より実態に即していると思う。

コールドケース6 第3話「自由学校」

私はWOWOWを契約していて、放送されている海外ドラマをいくらか継続して観ている。
中でも「コールドケース」は第3シーズンから続けて観ているが、面白い作品であると思う。
フィクションであるが、事件が起こった時期の時代背景を上手く描写しており、アメリカ現代史の勉強にもなる。

タイトルのエピソードは特に印象に残ったので、感想を記事にしたいと思う。
全てではないが、これからのエピソードについてもできれば感想を書いていきたい。

以下ネタバレあり。

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内閣府のひきこもり調査について

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100724-OYT1T00081.htm
http://www.asahi.com/national/update/0724/TKY201007230751.html
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100724/trd1007240501000-n1.htm
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100727k0000m070132000c.html
“予備軍”155万人の衝撃!「趣味のときだけ外出する」新たな引きこもりが急増中 | うつ、ストレス、不眠 | 健康 | ダイヤモンド・オンライン

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2010年参院選についての短い雑感(「組織票」について)

私がこの度の選挙について思ったことは、「組織票はあなどれないな」ということであった。

私は肉親が電気関係の職場に勤めているのだが、その労組から、電力総連出身の民主党候補を応援するようにとのビラを貰ってきていた。
開票実況を観ていた方はわかるかもしれないが、特に民主党比例代表は、「ナントカ連合」や「カントカ総連」出身の候補が多い。
また、社民党の2位を取った候補も、自治労の出身だ。

こういう集票マシーンの存在については、政治を堕落させるものだとする批判も多い。また、これは人の政治的な自主性を阻害するものだ、という意見もある。しかし、民意を集約する、という役割は決して軽視すべきではない。そして、もしこれが無かったら、変なタレント候補にもっと票が集まってしまうと思う。

私は比例では保坂展人に投票したが、(社民の2位の候補に比べて)集票組織に依拠していなかったことも、彼が残念な結果に終わった理由の1つだろう*1

*1:もっとも、彼がヒエラルキー的な集票組織を駆使するのを好む人間とは思えないし、また支持者(となりうる人)も、これを好まないであろうが。

印鑑の正当性

matsuotakuma中途採用の書類選考中なう。印鑑を斜めに押してる人、写真を貼ってない人、貼ってあっても、まっすぐに切れてない人。。。この人たちは、本当に採用して欲しいと思ってるんだろうか??link
はてなブックマーク - Twitter / 松尾琢磨(まつおたくま): 中途採用の書類選考中なう。印鑑を斜めに押してる人、写 ...

そもそも、顔写真や印鑑を要求することにどれほどの正当性があるのか、という問題がある。少なからぬ人々が、このようなものは必要ない、と考えているが、他方でこれを要求する企業も多い。したがって、職を求める者は、そのしきたりに従って書類を作成するべきなのであろう。

ただし、それはあくまでも処世術としての話である。この問題に限ったことではないが、処世術として正しいことは、それが正義に適っていることを意味しない。ところが、この両者を混同し、処世術として正しいことは正義なのだ(逆に言えば、処世術として間違っていることは悪なのだ)、という考え方に陥るケースは多い。

まあ、処世術の話を考慮に入れないとしても、印鑑や顔写真の正当性については意見の分かれるところだけどね。でも、「世間ではこうだから」と言って終わってしまっては、進歩もないと思う。