内閣府のひきこもり調査について

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100724-OYT1T00081.htm
http://www.asahi.com/national/update/0724/TKY201007230751.html
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100724/trd1007240501000-n1.htm
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100727k0000m070132000c.html
“予備軍”155万人の衝撃!「趣味のときだけ外出する」新たな引きこもりが急増中 | うつ、ストレス、不眠 | 健康 | ダイヤモンド・オンライン


調査結果そのものについては、内閣府青少年に関する調査研究等 - 内閣府に存在する。

我が国の問題は、どこか会社等に入って働くこと=社会参加すること、と捉えられることにある*1

人は社会的な動物である。経験したことがあれば分かると思うが、社会から切り離されているという状態というのは、非常に辛いものである。これは精神的によろしいものではない。

しかしながら、我が国の諸産業がこれだけの人間を勤労者として吸収するのは、おそらくは不可能であろう。それよりもむしろ、社会参加の範囲を拡大する方が良いのではないだろうか。


そういった意味では、この調査が趣味のために何か外出することがある場合をもひきこもりに含めていることは問題である。

また、親の金で生活しながら、趣味に出かけるなど「甘えている」証拠だという人もいることだろう。しかし、あえて弁護するならば、その世界にかろうじて社会とのつながりを意識している動きであると仮定するならば、現状打開に希望が持てる人たちであると考えたい気がする。かつて「オタク族」と呼ばれる若者たちが注目された時があった。彼らの場合は趣味を共有することでかすかに外での人間関係を保持していたのだが、いつの頃からか、それさえも切ってしまった存在として、「ひきこもる若者たち」の実態が浮かび上がってくる。せめてオタク族的な他者との交流が持てるようになることが、社会参加の第一歩になるとも考えられる。その一方、この項目には肯定しなかった残りの1/3の人たちの中には、何らかの病理や障害を抱えている人たちが含まれている可能性があると思われる。 (概要:26p)

この点については、2つの点で問題があると言える。

  1. 趣味の為に外にでることは本格的な社会参加であると捉えていないこと。
  2. 外に全く出ないことを問題視していること。

それにもかかわらず、「趣味の為に外にでること」に積極的な意味を見出そうとしていることは評価できる。さらに言えば、就学や就労に比べハードルの比較的低いこのような社会参加が肯定的に見られることは、「完全にひきこもっている人」にとっても良いことである。

だが実のところ、「趣味の為だけに外出する人間はひきこもりか否か」なんてのは、瑣末な問題である*2

重要なのは、以下の点ではないだろうか。

無口ではあるが自分の考えをしっかり有している人間であるとか、言葉に頼らず人の気持ちを「察する」能力を高く持っている人間は、今の日本社会
では評価されなくなりつつある。こうした現代社会においては当たり前とされる価値観の進行が、「ひきこもり」化する若者たちにとっては、実に生きにくい社会になっているのではないだろうか。(概要:p25)

「いままでの日本社会は、イケイケの元気なエネルギーのある人たちを教育でも社会でもモデル化してきた。その流れの中で、取り残されてきた人たちなのです」
 引きこもりの人たちは、まじめで、融通が効かない。臨機応変に泳いでいくことができないのだという。
「教育現場などで、コミュニケーション能力を高めるトレーニングが重視されています。しかし、それに乗れない子どもたちがいるという視点を見失っているのです」(ダイヤモンド:p4)

まあ、こうした点は、産業構造の変化とも関係があると思うので*3、なんとかするにしても一筋縄ではいかないところはある。

だが、社会を変えることは難しくとも、個々人が自主的にやることは可能であろう。「人間関係をうまく構築したり、きちんと言葉で意思表示できなかったりする」人の能力を見出し、彼/彼女が不当な評価を受けそうな時は擁護する。こうして支えられた彼/彼女は、同じような困難を持った人に対し、自分がされたのと同じようにする責務があるだろう。そうやっていけば、より生きやすい世の中になっていくのではないか。

この考えはやや理想主義的なきらいがあり、またどれだけ賛同されるかわからない。しかし私自身、引きこもりを引きこもりたらしめるような社会の構造によって、苦しい思いをした人間である*4ので、なんとかしていきたいし、またそれが私の使命だと思う。

*1:「社会人」という用語がどんなケースで使われるかを考えて欲しい。

*2:ダイヤモンドの記事のはてブでそこにばかり注目していた方々が多かったことは残念だ

*3:第2次産業→第3次産業の変化とか

*4:私自身が引きこもり(だった)というわけではないが