後藤啓二弁護士「多数決で決められないこともある(キリッ」

世の中には、多数決で決めるべき問題とそうではない問題というものが存在する。

人々の自由や権利に関する問題は、後者の最たるものであろう。

少数者による横暴と同様、多数者による横暴も、避けなければならない。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100511/214348/

世の中には「多数決で決めるべきでない問題」と言うものが存在することを指摘しているこの記事は、それ自体では非の打ちどころの無い内容である。
その点は認めておかなければ不公平である。

唯一の問題は、この記事の筆者が「後藤啓二弁護士」であることだ。

私は常日頃から、誰が書いたかでなく、どのような内容を書いたかで文章を評価しようと心がけている
だが、その内容が以前に表明された考えと矛盾をきたしている場合、それについて突っ込みを入れることは、悪いことではないように思う。

おおよそ人間というものは、矛盾だらけの存在であって、外では人道主義的な振る舞いをする人間が、家庭内では暴君になることもある。そのような人間的な矛盾が、ある種の魅力になっている場合さえあることは、私も否定できない*1

ただ、公共の問題においてもそれをそのまま適用し、「私は人種差別とユダヤ人が大嫌いだ」的な言説をそのまま放置するのは如何なものかと思う。特に、後藤弁護士のように、公的な分野において様々な影響力を行使している人間については。政治など公的な問題が浪花節的になるのは、あまり望ましいこととは言えない。

というわけで、俎上に載せても、バチは当たらないだろう。

http://civilliberties.blog63.fc2.com/blog-entry-365.html
児童ポルノを許さない社会とするための緊急アピール(pdf注意)


これは、後藤啓二による、「児童ポルノを許さない社会とするための緊急アピール」という内容の文章である。

ほとんどの欧米諸国では単純所持が禁止され、G8で禁止してないのはロシアと日本だけです。また、CGや漫画も多くの国で規制の対象とされ、2009年8 月、わが国は国連女子差別撤廃委員会からこれらを禁止することを要請されています。

2007年の世論調査では大多数の国民が児童ポルノの単純所持の禁止(90.9%)及びCG・漫画も規制の対象にすること(86.5%)に賛成しています。

前者の引用においては、国際社会において、後者の引用では、国内社会において、多数決原理に基づいて、単純所持や創作物規制を訴えている。

この文章は、2010年3月31日に発表されたものである。冒頭の記事は2010/05/13付のものである。たった1ヶ月半前に書いた文章を、彼はもう忘れてしまったのだろうか?いやいやそんなことはあるまい。彼の経歴を見てみるならば、私のように物忘れの激しい人間だとは到底思えない*2。それとも、「転向」でもしたのであろうか。

彼は、冒頭の記事において「衆院選は民意を必ずしも正確に反映しているわけではない」ということを述べている。その通りだ。
であるならば、この「2007年の世論調査」なるものも、同様なものであり、民意を反映しているとは言えないのではないか?
実際、この調査に対しては、下の記事のように疑義が上がっている。
都条例に反対します(続き) /情報捏造?: 黒い森の祠
少なくとも、民意をどれだけ表しているかの正確性について、この世論調査が、先の衆院選挙の結果に優っているとは、とても思えない。


おそらく、彼は単純所持の規制は人権侵害に結びつく可能性はないと考えているのだろうし、また、創作物の規制に関しても、それは自由権の問題ではないと考えているのだろう。従って、多数決でどうするか決めても構わんということになる。だからこのような欺瞞が言えるのだ。

まあ、それはそれで一つの態度かもしれない。少なくとも、「○○人は人間ではない!だから基本的人権も無いのだ」というような主張よりは、善良ではある。

*1:ツンデレ(今ではもう、この言葉もあまり使われなくなった感がある)を、この例として挙げるのが適切かもしれない

*2:一ヶ月半前に書いた文章を忘れるような人が、東大に入れるだろうか?