「覇気の無い若者」論

http://sankei.jp.msn.com/life/education/100111/edc1001110243000-n1.htm

この社説は、朝日新聞に載っていてもおかしくないような内容である。それが産経に載っているということは、この手の若者論が左右の別なく受容され得ると言うことを如実に表している。


右派路線では食えなくなってきているので、老人向けにシフトしようとしているのだろうか?それはそれで、経営戦略としては正しいがw。

これに対する反論については、「村野瀬玲奈の秘書課広報室」さんのところで紹介されていた広島瀬戸内新聞ニュースさんのこの記事が、私のような文才も知識も無い者による批判よりも適当なのであるが*1、まあそれでは話が続かんので、「正論」に対するブクマ※を取り上げながら、考えて行く。

ブクマ※からいくつか。

kamm その学生運動でどれだけの学生が授業を受ける機会を失ったと思ってるんだろう。加藤秀俊さんはそんなに鉄パイプで殴られるのが好きなの?

「授業を受ける機会を失った」学生を一人知っている。私の父だ。父曰く、「学生運動が激しくなったので大学を辞めた」のだそうだ。
まあ、単にめんどくさくなって辞めたのを格好良く言い訳しているだけなのかもしれないがw、それでは話が展開しないので、まあそういうことにしておく。

んでだ、私は思うわけだ。個人の自由や権利を抑圧する革命に、何の意味があるんだろうかと。「革命に犠牲はつきものだ」と革命家諸君は言うかも知れないが。私は、「個人の自由や権利」を最大限重視しているので、それに対する犠牲は、たとえ良い目的から生じたものであろうとも、そして究極的には「個人の自由や権利」を達成するものであろうとも、気にせずにはおられないわけだ。私の意見はナイーブだろうか?それでも、「革命の為なら犠牲も辞さない!」と声高に叫ぶよりは、こうした葛藤を抱えているほうが、良心的であると思うのだが。

ところで、もしもの話だが、仮にこの記事を読んでキレた若者が、バットでも持って加藤先生をぶん殴りに行ったとしたら、先生はその若者に対して、「覇気があってよろしい」とでも言うのだろうか?w

metabodepon 学生運動を美化されても困るよね。それが酷い状況だったから後の学生は批判的で誰も参加しなくなったのでは。ネット言論はばらばらに見えてもまとまると力強さがある。お年寄りには理解できないだろうが。
dubro988 立て看があれば元気があって、ネット上の活動が元気がないというのは、あまりにも単純すぎる議論。
showgotch 戦場がネットに移っただけだよ

ネットが若者を非政治的にしている、という意見は必ずしも当たらないであろう。実際表現規制問題においては、「パブコメ送れよ!」とか「手紙書けよ!」と訴え、その為のテンプレを載せているサイトが多く出来た。これに促された人は決して少なくないだろう。また、イランにおいては、ネット(Twitter)によって運動が起こったし、米のオバマ大統領や、少し前の例で言えば韓国の盧武鉉大統領が勝利したのも、ネットの力によるところが大きい。

もし若者が政治的でないとするなら、それはネットではなく他のところに原因を求めるべきであろう。
たとえば教育とか。若者に、従順と服従を押し付けてきたのは誰であったか。社会を変革する方法について、また先人たちがいかに社会を変えてきたのか、それらことについて教えないようにしてきたのは、誰であったか。再考すべきである。

m_yanagisawa 若者に元気がないと言いつつ、成人式で暴れる連中には文句言うんだろうな…
akiyuz 暴れたら暴れたで叩かれる。大人しければもっと覇気を持てと叱られる。つまりどっちでもいいってことか。

これには同感だ。少し前にフランスにおいて、「貧乏な若者が商店の食べ物を食い逃げするデモ」というのがあったが、日本でもこういうのが起こったとしたら、加藤先生は肯定するのだろうか。氏個人はともかくとして、産経新聞は「最近の若者のモラルの低下はけしからん」と嬉々として書きそうであるが。

animate 社会学者の社会知らずか/若者全体をオルグするような共同幻想が描けなくなったんだよ

まあ、世界が今よりもっと単純だった(ように見えた)時代の産物だよね。加藤先生のような意見は。
加藤先生は、「 ひたすらゲームその他の『仮想現実』のなかにひとり浸りきってホンモノの世界と向き合うことを知らない若者たち 」を批判しているが、運動を動かしたのはまさにその「仮想現実」であったろう。「革命が起これば楽園が誕生する!」みたいな。
なので、仮想現実そのものが問題なのではなく、「世界を変える力にの源泉になるような仮想現実が、なぜ無くなったのか」を問題にすべきであろう。


最後に、「覇気のある若者」による政治的行動について。

http://www31.atwiki.jp/kutabare-demo/pages/1.html
http://d.hatena.ne.jp/noiehoie/20100105/1262702850
昨年11月に札幌で開催された「就活くたばれデモ」が、今月23日に東京でも開催される。昨今の酷い経済情勢・雇用情勢のなか、学生に過度の負担を掛ける「就活」と呼ばれるものについてもまた、問い直されるべきであると考える。なので、このようなデモの開催は喜ばしいことである。できれば私も見に行きたいのであるが、残念なことに東京に行く用事はないので。

デモが無いとおっしゃっていますが、加藤先生、こういう政治的行動もあるんですよ。象牙の塔に篭っていてはわからんでしょうがw。

*1:これらの記事自体は、加藤氏の「正論」とは無関係である